⑥点在する避難生活者


地震や洪水などの広域災害では、避難生活者が点在してしまいます。

 

小エリア・小ゾーンとは、地区(主として学区・校区を指す)から更に細かくした、町内会(マンションでは自治会)単位を指します。

 

町内会では、一次避難場所として側近の公園や広見、工場敷地内、土地区画部分などへ一時的に住民を参集させ、状態や情報を得るスペースを選定しています。そこで得た情報を、地区公民館(地区本部)へ報告する事になり、公民館が情報集積場となります。

公民館からは、市区町村(役場)の災害対策本部へ報告されます。

 

指定広域避難所とは、学区(校区)範囲の居住人を対象とした、自治体指定の避難所で、主に小・中学校が避難所となります。

 

そもそも広域避難所には、地域の全員を収容する能力はありません。

 

そこで、この他にも福祉避難所(老人施設、身障者施設)や、公共施設外ではショッピングセンター。タイミングによっては、学習時間帯に発災する可能性もあり、私立学校や専門学校などで、耐震基準をクリアしている建物に対して、自主民間防災組織と協力体制を結んでいる地域もあります。

 

さて、小ゾーン・小エリアでの避難生活者となる事由には、

■広域避難所まで、たどり着けない方

※歩行困難/要介護者/介護器具が家庭にある方(在宅介護)/遺体を安置してあるなど、その場を離れる事が出来ない状況。

 

■家屋から離れようとしない方

※まだ要救助者・不明者が残っている/愛着/ペットが帰って来る/防犯面の不安

■一次避難場所は、顔なじみのご近所さんの集合体なので、居心地を求めて滞在する方

※その場での共存を求める方が多い(特に独居老人)。コミュニティー化

 

■自宅の被害が小さい為、避難しない方

 

それ以外には、

■帰宅困難者・途上遭難者

こんな例もあるのです。伝令として避難場所から出向いたが、皆の元へ戻れない。日中に移動を開始するも到着が夕刻となり、その場で滞在しなければならない時。

 

事態の問題点として、物資の供給(配給)があげられます。

配給を行うには、その場に何人居るのか?を知る事が重要で、何がいくつ必要か?となります。配給の多くは、広域避難所を起点に行われるという事。ただし、即時には行われません。

 

また、広域避難所には屋根や囲みがあるが、「小エリア避難者は野宿に近い状態」である事。

囲みがあるという事は、雨風を防げ、電気や水回りも復帰すれば使えますが、小エリアにはせいぜい、公園のトイレと水道程度でしょう。

 

ではどうすれば、「どのエリアに何人滞在しているか?」を知る事ができるでしょうか?

 

民間防災では、居住者リストの作成(※1世帯管理票)を紹介しています。

 

年に一度、住民全員に記入して頂き、その場で封印します。封印した封筒のオモテには、「記入年月日、筆頭者、家族名、年令、性別」のみを記載し、防災倉庫があればその中に納めます。

防災倉庫が無いなら「非常持出しボックス」に収納し、町会長か防災役員宅で保管します。

 

発災時にはこれを開封し、所在の確認を行い、全てが聴取できれば、一次避難場所へ向います。その際、居住宅のライフラインの供給、ガス洩れ、通信回線等と周囲の道路・斜面等の被害状況も取りまとめ、公民館に設置する「災害対策地区本部」へ報告します。

 

この時点で、公民館へは人数や不明者、周囲の被害の情報が伝わります。

ただし、電話や無線が通じる事が大前提で、それらが使用不可能な場合は、連絡員が二輪や徒歩にて伝令として走ります。

 

次に指示があれば、二次避難場所へ移動する事となるのですが…

 

傷病者や不明者・帰宅困難者等の事態を考慮し、その場の全員が移動にYESとならない限り、動かせません。

仮に、少数でも離れてしまうと、相互の連絡の為に、責任者と伝令が必要となりますし、その間のやり取りにも手間暇がかかります。二次避難場所までの距離が短いか、無線等の通信手段があれば可能でしょうが…。

さて、残るは「囲み」をクリアして行きましょう。

 

一次避難場所の多くは公園や広見です。

ここでは、町中の小さな公園を例にあげてご説明します。

 

一次避難場所で必要となるのは、「生活スペース」です。

その場に、足付きテントを「世帯主が座った状態で全員が入る分」を設置し、側面をビニールシートで囲みます。下部には間口をあけて敷けば、物資等の箱物も詰める事ができます。

 

テントは世帯主との会合や、配給があった場合の倉庫、支援者の活動拠点としても使用でき、上空からも目印となります。最悪の場合、遺体安置のスペースにもなりますので、レイアウトの合わせ、多めに準備しておきます。

 

このままでは横になる事が出来ませんので、町会費に防災支援の部を作り、各家庭に3~4名用の簡易型テントを配備します。

各家庭にテントがあれば、着替えや荷物置場、簡易トイレを中に入れて使用出来ますし、もちろん寝床にもなります。

 

どのような災害事象でも、テントは個人単位で必要になります!

 

町会費で賄えない部分は、個々にて揃えさせるキッカケともなり、事前に設備品を準備しておけば、設置レイアウトも計算しておけますし、面積を逆算して一次避難場所の選定、再考査も行えます。

これを「○○町内会民間防災基本計画」として、文書化しておきます。

 

支援側も、尋ね所があれば「どこに避難生活者が居るのか?」「不足物資は?」等の情報が得やすくなります。


《問題点》

①個人テント分のスペースが無い。周囲には土壌が無い。

※避難場所の見直し。大所帯ならば更に班別けし、避難場所を分割させる。

 

②備品を納める場所・倉庫が必要。

※防災倉庫の助成制度を活用する。町会に集会場があれば、一画を防災備 品庫に改良するか、そのものを防災倉庫扱いにする。

 

③居住者リストへの記入には抵抗もある。(※1)

※個人情報の中でも最上級の配慮が必要となる為、必ず目の前で封印する。

居住者リストの原稿を付けておきます。ご自由にお使い下さい。

 

④集会場が無い

※一次避難場所の届け出時に、自治体窓口にて、その場に備品庫の設置を 尋ねてみます。

《町内会に必要な備品類と解説》

★テント:足付きで白張りのもの。囲み幕も必要。

 

★ブルーシート

上記テントの大きさを求める際、一区画6帖から8帖程度を基準化しておけば、逆算してスペースを確保できます。

シート自体は「タープテント」「建物補修」「浸水・進水防止」「遺体安置」「隔壁」「下敷き」と様々な用途があります。

 

★ロープ

強化補助用と荷物の固定用、救出時にも兼用できる物を定める。

ブルーシートを固定するにも必要。

 

★折畳み式テーブル

二人がけ程度のコンパクトな物であれば、収納時も可動時もスペースに余裕をもたらせられる。

 

★パイプイス

パイプ椅子は大人ならば4ヶ程度を並べ、ベッドに応用できるデザインがベスト。テーブルよりも数が必要。

地域に会館等があれば通常予算枠にて展開が可能。

 

★のぼり旗:町会名の入った物。人が存在している証になります。

 

★火おこしセット

暖・湯・料理。この3方向に火が必要となります。

燃料が木片ならばドラム缶やペール缶。コンロにU字溝を流用する場合も各々のサイズに合わせた鉄板と網、熱に強い針金が台数分必要となります。火種もマッチやライター、湿気に強い固形燃料をセットしておきます。その場のスペースとニーズを考慮し、セッティングします。

 

★簡易トイレと「応急小便器」

条件の一つとして、男性と女性は当初から区分しておくと、余計な問題を抱えなくて済みます。

女性と高齢者(車椅子)、男性の大便には「段ボールトイレセット」と「丈の高いテント」の組み合わせを考えておきます。

男性の小便は、周囲の環境で変化しますが、田畑や土手があるならば、地面に穴を掘り、小便器の代わりに板を設け、土中に浸透する様、溝を付けます。背面には隔壁を作り、男子小便用と明記すれば間違って汚物に近づく方も減らせられます。

 

★毛布やアルミ製シーツ

毛布では厚みがあり、収納スペースが無いと言う場合、代わりに「カーテン生地」の手ごろな厚みの反物(90cm×180cm程度)を準備しておくと良いでしょう。もちろんカラダに巻く事もでき、屋内生活時には隔壁(目隠し)、就寝時の毛布にも使え、ストック時は厚みも無く収納しておけます。

 

★非常食(臨時数)

先ずは日持ちのする乾物(有効期限の長いもの)やパッケージ品を優先します。

実際には、その場に居る方の環境で変化します。

過去の災害では、避難時は元気な時を想像・想定され、収集されていた非常食を、まさかの時には一切、口にできなかった方も多いのです。

理由として、その日の体調や食事制限が入ってしまった方。怪我をして運ばれた方、持病持ち、産まれたばかりの赤ん坊が食せなかったのです。

当然、アレルギーや持病の違いで食せる物に違いがあり、多くはカバーできません。あくまでも町内会では、家庭から取り出せない場合と、その場に来てくれる方々への応急数(臨時数)として考える事しかできないのです。

 

また、非常食には賞味期限もある為、年に一度の防災訓練時に支給し、実際に味わってみることが理想です。

そのパッケージ品が良いとなれば、各世帯から必要数を募り、町内会の臨時数と合わせて発注すれば、一斉に行き渡ります。

その際には、世帯情報も得ると良いですね。

 

《臨時数とは…》

居住者以外の来訪者。周辺の企業からの避難者、支援の為に訪れる者などの数。

 

★救出セット:救助道具と応急医療のセットは、2セット以上必要です。

 

★電源と周辺機器

可搬エンジンであれば、それに必要な燃料も合わせて必要です。

電灯もワット数とスタンド等の器具類が必要。

 

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結論ですが、「町内会のセット」は共有される品々である事です。

個別で必要な物は個人で求め、あくまでも「町内会セット」は個人で求められない高額な道具、数が必要な物、一次避難スペースで必要な物、細かな物は予備品として考えておきます。


《問題点》

①指定避難所の地域格差

※都心では学校が密集している地域もある。反面、山間地域などでは統廃合され、周辺には避難所すら無い地区もある。福祉避難所も同様。

そうなればとうぜん、拠点避難所(無線や衛星通信設備のある場所)までも遠い。

 

②私立学校も応急避難所化へ

※公立学校、特に小中学校だけでは人と品物が溢れ、収容不可能となり、さらにそれらをさばく為の人手が集中し、衆人災害のキッカケとなる。

公立.私立の大学、高校も応急避難所として確立できれば、帰宅困難などの途上遭難者も受け入れが可能となり、支援物資の割り当てなども分 散した状況下で備蓄しておける。

 

③一次避難・一時避難に使う「一次」と「一時」の違い

【一時】

(1)ある限られた長さの時間。

 ア)しばらくの間。短時間。「出発を一時見合わせる」「晴れ一時曇り」 イ)過去の、ある時。「一時はだめかと思った」

 ウ)その時だけ。その時限り。「一時の気の迷い」

(2)一回。一度。「一時払い」

(3)時刻を表す。「1:00」〔(1)(2) は副詞的にも用いる〕

 

【一次】 

(1)何回・何段階かに分けて行われることについて、第一回。一番目。

  「一次試験」「一次変電所」「第一次段階」

(2)ある事物・現象が、根本的・原初的であること。「一次史料」

(3)〔数〕 整式で、ある変数に関して二乗またはそれ以上の項を含ま  ないこと。「一次方程式」

 

●一次避難所(避難場所)

一次避難所とは、一時的に避難できる広場・グラウンドをいい、広域避難場所は、大地震等で延焼火災が発生するなど、二次災害から身を守るために避難する場所をいいます。

また、地域によっては、地震や火災等の「一般災害避難所」と、津波による「津波災害避難所」を別に設定している所もあります。

移動距離を換算し、一次集合場所を選定する団地等もあります。

 

●二次避難施設

二次避難施設とは、災害時に避難を行い、その建物内で寝泊まりできる施設をいいます。

 

これらを考えても「一次」「二次」「指定避難所」と分散し、被災者は「点在」する事となります。その他にも、影響のない家屋で生活を続ける方々も出てきますし、町会の安全の為、その場で滞在をする事にもなります。


★クルマを使ってシートを張ってみる。

避難場所にクルマを持ち込めるなら、ブルーシートで屋根と壁を作ってみよう。

ブルーシートは10帖×1枚を屋根部と壁面に。

中には6帖用を。後は、地面とクルマの隙間と、車両とシートの密着を細工する。


出入口のシートの隙間を埋めるツールとして、粘着マジックテープを設営後に貼ると良い。

支柱ポールは最低3本あると頑丈にできる。


背の低いクルマの場合は、手前を高く、クルマ側を低く、そして、クルマの屋根を覆い隠すようにすれば、隙間から雨が入ってこない。

地面にも壁の周りにミゾを掘ると、入り込みを防ぐ事ができる。

もちろんクルマの周りも同様!

★タープテントと組み合わせる方法

テントだけでは、直射日光による気温上昇をやわらげる事は出来ません。

設置テントには、食料や仮設トイレ等も置く必要も出てくる為、季節によっては、「臭い」や「腐食」などにも気を使う事となります。

また風雨の時も、雨音をもやわらげてくれます。

テントの種類編

★ワンタッチテント

★組み立て式ドーム型テント

★張りテント(集会場・応急処置場・物資倉庫に)

張りテントは「点在する避難生活者」の存在を知らせる為、上空からも目につくように、あえて使用します。

また、「遺体の安置スペース」としても必要となります。