②法のテリトリー


災害発生後には幾種かの法が適用されます。

 

「災害対策基本法」「防災基本計画」「災害救助法」など、ボランティアの項目を含んだ法令があります。これに付随し、厚労省・国交省・文科省など、各々の持ち分で個別に作成しています。

 

皆さんには「ボラには法による規制は無い」と説明していますが、実際には当事者の中からも自然発生する為、調整役のボラコの育成や保険制度など、自治体の所管で枠組みもされています。

 

さて、災害用語には自身や家族で賄う事を「自助」、住民が協力し合う事を「共助」といい、避難所での共同生活がそうです。

また、仮設住宅設置などには、国や自治行政の采配が必要です。これらを「公助」といいます。

 

何を伝えたいかと言うと、「共助と公助」の境目をつける事が出来ないと言う事。所管が「公」だから私たちには関係無い!ではダメなのです。

 

現地では救出活動を消防や自衛隊と協力しあい、「どこそこの誰々の姿が見えない。」と聞きつければ、所在確認に走り回わったり、生き埋めになっていれば、その場で掘り起こす事になるでしょう。

そして、管外から入って来る応援者はあくまでも県外者です。となれば船頭役に地元を良く知る方が必要となってくるのです。

 

また、経済巻き込み型の企画においても、地元の方が一緒に参画しなければ、一向に自治体の経済回復につながっていきません。

◆守は「人」か「法律」か?!

さて、阪神・淡路大震災の時には、自衛隊が準備したお風呂が「公衆衛生法に抵触する」、学校給食の代わりに「炊き出し」を続けていると、仕出し扱いになるだとか、食品衛生法なども法のテリトリーとして上がってきますね。

 

束縛のない自由はない!これは当然でもあるのです。

 

被災者にはベストだと思われるところでも、法に阻まれる事がありますし、逆に法を守らない人も現れます。

 

地震発生直後には、物資倉庫や商店から品物を盗み取る「略奪」が発生し、「自分の町は自分達で守ろう!」などと言い出す間もなく、あくる日には、現金自動支払機が機械ごと無くなっていました。

おそらく重機を使っているでしょう。その労力を人命検索に費やしてもらいたいですよね。

 

これもまた「人」なのです。

 

阪神・淡路大震災以降、多くの犠牲者を出し続けている日本ですが、命ある住民の明日を支えるには、先ずは「役場機能の回復」が最重要なのだと「東日本大震災」時に確信を持ちました。

 

罹災の発行や、被災者が今からを生きる為に必要な申請は、早期に行える事がなによりです。その為にも「役場」が機能を失わない事なんですよ。

 

先ずは人命(どこで、誰が、どの様な状態で、何が必要か)を優先した動き。次に、手配(被災者が希望するものは?)。そして、相互の協力。

《両者とも、和を持って事を成す!》が初期の初期に必要なのだと感じました。

 

さて、法で守られている優先部分もある。と言う事も知っておいて下さい。

手配と手続き

a) 保険・補償の類

 

任意加入の保険類の申請は、加入者または近親者によって行います。

事態によっては加入先のお店も被災し、運用機能が麻痺する事となりますが、加入者本人であれば保険証券番号の控えと、商品名程度は控えておき、あなたが生きていれば、加入保険会社の専用ダイヤルか、代表窓口へ掛け合ってみます。

ここでも最終的に「登録印鑑」が必要となる場合もあります。

 

近親者となると、幾らご子息でも保険各社の条件をクリアしない限り、認めて頂けない事が多い様です。

保険各社の条件は一定では無く、例えば、同居する者が加入者の死亡届を行い、その証明を保険会社に提出するなど、書類さえあれば良い場合や、加入者の本人確認さえできれば良い場合もある様です。

これらは、近親者が生きている場合は手配が可能でしょう。

 

また、あなたが加入した保険担当者が助かっていて、その方に連絡がつけば、どのような保険に入っているかなどを調べながら手配してくれます。

 

しかし、身寄りの無い方や、独居老人で人知れず亡くなっている場合。長期に渡り、発見されない間は、手配も手続きも出来ない事になります。

ここでも、本人確認ができる情報が必要となります。

 

損害保険は災害発生日より、3年以内に手続きを行わなければなりません。

いずれにしろ、保険証書番号と会社名、商品名は災害医療カードに記載し、持ち歩くと良いですね。

 

保険金支給は、保険金を支払う際に用いている口座へ振込まれます。

 

災害により、多くの支払がかせられ、それが底をついても、契約上の定款に基づく金額が支払われる事となっています。

 

不足する部分は、国民の救済措置として国がフォローする事になります。

 

以下は「災害救助法」適用時の生命保険協会の対応です。

災害救助法が適用された地域の被災者のご契約について

 

生命保険会社では、災害により「災害救助法」が適用された地域の被災者のご契約について、以下の特別措置を実施しております。

 

1 保険料払込猶予期間の延長 

保険契約者からのお申し出により、保険料の払込みについて、猶予する期間を最長6ヵ月延長いたします。

 

2 保険金・給付金、契約者貸付金等の簡易迅速なお支払い 

お申し出により、必要書類を一部省略する等により、簡易迅速なお支払いをいたします。

 

※お取扱いの詳細につきましては、ご契約されている生命保険会社にお問い合わせください。


b) 国際援助(海外からの支援)

 

災害時に必要なカテゴリを、民間防災では「衣・食・住+医・職・従」と表現しています。

 

甚大な被害が出た際、国際支援として海外各国からの救援物資が届きます。単に食料といっても中には我が国の「食品衛生法」などで、流通させられない品もあります。

現に「東日本大震災」時には、衛生上、熱湯で調理ができるカップラーメンが、主食の様に取り扱われた避難所もあったそうです。

 

前半には、簡易お風呂についても記載してありますが、ここにも「公衆衛生法」が絡んでいますよね。

「阪神淡路大震災」時には、自衛隊員により数時間に一度、お湯の交換をくり返されたそうです。この方面でも民間でお手伝いできるのでは?と思ったり。

ここで問題となるのが「廃水」です。生活廃水として流す為にも役場への申請が必要!となるのです。

 

それから、医薬品もその類いでしょう。

被災地に善かれと思うところでも薬事法で規制される部分が出てきます。

 

海外からの救助犬などの動物も空港での検疫を受ける必要があり、一度に多くの犬を持ち込む事も出来ないでしょう。

 

これらも「法」との狭間があり、我々民間では応対出来ない部分でもあります。

人の安全への堤防となれば、けっしてネガティブになる必要は無いのですが、そこには「生と死」の狭間もある事を、平時の内に理解しておいて下さい。

 

当事者となってからでは、クレームばかりが先行してしまい、解決へは向かえませんから…。